敗戦によってうちひしがれていた1年後の同じ夏の昭和22年8月9日、11才の私は農家でありながら、日々食事することが精一杯であった。地球という大き い世界から狭い袋小路に追いやられた日本は、すっかりプライドをなくし、何一つ世界に誇れるものはなかった。そんな時に、日大の学生古橋広之進という選手 が、全日本選手権大会400m自由形で世界新記録を出したというニュースを、ラジオで聞いた。信じられないニュースであった。世界で一番ということも、そ れ以後23回の世界新記録樹立、さらに昭和24年8月16日には、全米水泳選手権の3種目で世界新記録を樹立して、本当だとわかった。嬉しかった。やっと 世界の末席に日本人が認められた気がした。橋爪選手も加えたこの活躍は、意気地をなくした自分に目をさまさせてくれた。日本人も世界で競えることがわか り、とても嬉しかった。自分も努力しなければと思った。今もあざやかによみがえる思い出である。







